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  • 執筆者の写真齋藤弘道

自筆証書遺言の保管制度に関する話の10回目です。保管制度に関しては一旦これで終わります。

前回は、「非営利団体における遺贈寄付の受入体制整備の内容と手順」についてお話しました。遺贈寄付を受ける団体側の話が少し続きましたので、話を戻して、今回は保管制度の手数料や手続きなどについてお話します。

4月20日に法務省から手数料と遺言書保管所が公表されています。

主な手数料は以下のとおりです。

・遺言書の保管の申請(遺言者) 1件3,900円

・遺言書原本の閲覧(遺言者・関係相続人等) 1回1,700円

・遺言書情報証明書の交付(関係相続人等) 1通1,400円

手数料は収入印紙を手数料納付用紙に貼付して納めます。

申請時に1回だけ3,900円を支払えば、ずーっと何年でも保管してもらえます。これは安い。自筆証書遺言を書いたら、これを利用しない手はありません。

ところで、どこの法務局でも預けられる訳ではありません。次のいずれかを所轄する遺言書保管所(後述します)から選んで保管を申請します。

・遺言者の住所地

・遺言者の本籍地

・遺言者が所有する不動産の所在地

また、突然法務局へ行っても保管してもらえません。申請の予約が必要です。予約の方法については現時点(5月30日)では公表されていません。7月1日から予約できるようです。

遺言書保管の申請には以下の書類等が必要です。

・自筆証書遺言の原本(ホチキス止め不要・封緘不要)

・申請書(記入済のもの)

・本籍の記載のある住民票の写し(発行後3ヶ月以内)

・本人確認書類(マイナンバーカードなど顔写真のあるもの)

・手数料(3,900円分の収入印紙)

保管申請の手続きが完了すると「保管証」が発行されます。後日、遺言書の閲覧・撤回や相続人等による遺言書情報証明書の交付請求の際に、保管証があると便利だと言う事です(紛失しても大丈夫です)。この保管証をご家族に示して、遺言書を法務局に保管していることを伝えると良いでしょう。

さて、遺言書保管所ですが、全ての法務局が遺言書保管に対応しているわけではありません。例えば、次の地域の法務局(本局・支局・出張所)の数とその内の遺言書保管所の数は以下のとおりです。

・東京:法務局23→保管所5

・神奈川:法務局16→保管所7

・埼玉:法務局17→保管所8

・千葉:法務局15→保管所11

・愛知:法務局14→保管所11

・京都:法務局10→保管所7

・大阪:法務局11→保管所6

・福岡:法務局15→保管所11

意外に少ないですね。特に東京。それだけ対応する人材や場所等の問題があるのでしょう。

自筆証書遺言を作成している方、これから作成される方は、是非早めに予約して保管しましょう。遺言書は書いただけではまだ半分、遺言執行して初めて思いが実現し、完成です。そのためには、遺言書が必ず発見される必要があり、今回の保管制度は非常に有効です。折角の良い制度ですから、活用しましょう。

これまで10回にわたって自筆証書遺言の保管制度についてお話してきました。制度をご理解される上で少しでも助けになれば幸いです。



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  • 執筆者の写真齋藤弘道

自筆証書遺言の保管制度に関する話の9回目です。

前回は、「非営利団体が法務局から通知を受けたときに、何を確認して遺贈の承認・放棄の判断をすべきか。予め遺贈寄付の受入体制を整えるべきではないか。」という話でした。

今回は、受入体制整備の内容と手順についてお話します。

時々、「当団体では今年度から遺贈寄付に取り組む方針を決定したので、パンフレット制作の監修をして欲しい」というご依頼をいただくことがあります。でも、ちょっと待ってください。

パンフレットを見た方から問い合わせがあった時に、どう対応するのでしょうか?不動産を遺贈したいと言われた時に、どのような不動産であれば受けるのか方針決定しているのでしょうか?遺言者が亡くなった後に遺言執行者から連絡があった時に、どのようなプロセスと基準で検討し、どの組織レベルで判断するのか決まっているのでしょうか?

さらに、法律・税務・実務等に関して不十分な知識のまま、相続人に迷惑をかける可能性があるのにその内容を確認しようともせず、平然と遺贈寄付を受けている団体もあります。これでは寄付者の思いは正しく伝わりませんし、悪い評判が立って遺贈寄付の普及に悪影響を及ぼします。

そこで、遺贈寄付の受入体制を速やかに整備されることをお勧めしていますが、その前提となる全体感は次のようになると考えています。

受入体制の根幹となるものは、「遺贈寄付に関する取扱規程」であり、ここに遺贈寄付に関する様々な方針、リスク認識、寄付の種類や財産の種類ごとの特徴や判断プロセスなどを記載します。しかし、これだけを独立して制作することはできません。なぜなら、ここには団体としてのポリシーが色濃く反映されるべきであり、団体の設立目的やミッションとも調和する必要があります。

したがって、まず遺贈寄付に関するリスクを整理して団体として認識し、次に定款やホームページ等に記載されている活動目的やミッションと整合する「寄付金取扱規程」と制作します。遺贈寄付は寄付の一形態ですから、「遺贈寄付取扱規程」も「寄付金取扱規程」の下位規程に位置づけされます。

続いて、不動産遺贈や有価証券等に関する具体的な運用マニュアルや包括遺贈のマニュアルを制作し、さらに、場面別の対応マニュアルやトークスクリプト、遺言者等に関する情報や交渉経緯の記録ツールを制作する構成とします。

当然ですが、規程やマニュアルが下位に行くほど、より実務的な内容になり、寄付パターンや状況に応じた対応も細分化されます。本来であれば、こうした体制整備が整った上で、広宣物を制作し、マーケティングを実行すべきだと考えています。

もちろん、ここに記した事項を最初から全部整える必要はありません。走りながら徐々に整備することで良いと思います。前言とやや矛盾するようですが、「まずやってみる」という姿勢も大切です。

ここで、ちょっと宣伝です。

遺贈寄附推進機構では、こうした遺贈寄付の受入体制整備をご支援するプログラムを用意しています。マーケティングのご相談やパンフレットやホームページ等の監修も承っています。非営利団体でご興味のある方は是非お問い合わせください。

次回は、保管制度にかかる法務局の手数料などについてお話します。



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自筆証書遺言の保管制度に関する話の8回目です。

前回は「ある日突然、法務局から通知が来て自筆証書遺言の存在が明らかになる」「非営利団体にもこの通知が来るようになる」という話でした。

では、非営利団体はどのように備えるべきでしょうか?

法務局から通知が来ると、自団体が遺言で受遺者に指定されていることが分かります。しかも、遺言者は亡くなられています。相続人や遺言執行者などが法務局に遺言書情報証明書(遺言書の内容が記載された証明書)を交付請求されたのでしょう。


当然、受遺者として法務局に遺言書情報証明書の交付請求をして、遺言の内容を確認します。そこには何らかの財産を自団体に遺贈すると書いてあるはずです。金額が記載されている場合もありますし、金融資産の〇分の1と書いてあるかもしれません。不動産の遺贈もあり得ます。

遺言書で遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者に連絡して、遺贈される財産の内容や今後の遺言執行スケジュール等を確認します。遺言執行者がいなければ相続人に確認します。

「故人の意思を尊重して有難く財産をいただく」ことが基本だと思いますが、中にはリスクが潜んでいるケースもありますから、本当に遺贈を受けるべきなのか慎重に検討すべきです。実は、受遺者には遺贈を受けない権利があります。遺贈の放棄を選択することが可能なのです。(包括遺贈の場合は特別なので別の機会にご説明します)

受遺者としては、遺贈を承認するか放棄するかの判断を遺言執行者から迫られることになります。その判断をするためには、様々なことの確認や調査が必要です。

では、一体何を確認すべきなのでしょうか?

シンプルなケースでは、遺言者の死亡日・遺贈される財産の内容や金額・財産の引渡し方法や時期・遺留分侵害の有無などを確認する程度で済む場合もあります。しかし、遺贈財産や遺言の内容によっては、相続人の状況・遺贈財産のリスク・換金可能性・税額や納付時期などの調査が必要な場合もあります。

法務局からの通知により、自団体に遺贈があることが分かった時に、これらの確認事項を速やかに確認し、的確に判断できるでしょうか?「弁護士等の専門家に任せるから大丈夫」という場合でも、遺言執行者や相続人から連絡があったときに、過不足なく情報を収集して専門家に相談できるでしょうか?

団体として遺贈寄付の募集をするのであれば、遺贈寄付の受入体制を整えるべきでしょう。十分な準備が整っていないのに遺贈を受け、相続人に迷惑をかけたり余計なトラブルを起こすようでは、せっかく思いを表明していただいた遺言者に失礼だと思うのです。


次回は、具体的な体制整備についてお話します。



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