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  • 執筆者の写真齋藤弘道

自筆証書遺言の保管制度(3)

自筆証書遺言の保管制度が今年にトピックになる、という話の3回目です。


前回は、保管制度について整理してみました。

もう一度ポイントをまとめると次のようになります。

(1)安い費用で手軽に遺言書を保管することができる。

(2)法的要件が満たされていることを法務局に確認してもらえる(内容の有効性は別)。

(3)相続人の誰かが遺言書を閲覧すると、遺言者や受遺者など関係者全員に通知される。


これらが「画期的」だと感じた理由をお話します。


前々回、「費用と手間ひまのかかる公正証書遺言が年間11万件。費用もかからず自分で自由に書ける自筆証書遺言の検認件数が1万7千件。どう考えてもバランスがおかしい。検認件数が少なすぎる。」とお話しました。恐らく、大半の自筆証書遺言は「発見されない」か「誰かに破棄されてしまっている」考えるのが自然です。


自筆証書遺言の最大の弱点がここにあります。法的に正しく、形式的要件を満たしていて、内容も有効な遺言をせっかく書いても、発見されて実際に使われなければ何の意味もないのです。


では、今回の保管制度でどうなるのでしょうか。上記のポイントに沿って考えてみます。


まず、ポイント(1)です。

自筆証書遺言は手軽に書けるのが利点ですが、どこに保管・管理するのでしょうか。一般的には、自宅のどこかに保管される方が多いと思います。本棚、仏壇や机の引き出し、金庫などでしょうか。生命保険証書と一緒にされている方もいると思います。ご家族に保管場所を知らせておくことも大事です。


銀行の貸金庫に保管される方もいますが、費用もかかりますし、亡くなった後の貸金庫の開扉は相続人全員の立ち合いが必要であることが多く、取り出すのがなかなか大変です。


それが、今回の保管制度で法務局に手軽に保管することでできるようになります。亡くなった後にご遺族が遺言書を家中探し回る(実際よくある話です)必要がありません。この制度が普及して誰もが知るところになれば、ご遺族は遺言書が(公正証書遺言は)公証役場または(自筆証書遺言は)法務局にあることを知っていますので、最寄りの公証役場と法務局で、遺言書の有無を確認すれば良いのです。


つまり、これまで発見されなかった遺言書が発見される可能性が格段に上がります。恐らく公正証書遺言よりも多く作成されている自筆証書遺言が、世の中に出てくるのです。


これは「自分の財産の行き先は自分で決める」という意思が顕在化することでもあります。とても素晴らしいことですが、相続人にとってはちょっと怖いことでもあります。


ポイント(2)と(3)については、次回へ続きます。



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